民俗学

サトウハチロー『僕の東京地図』

● 古書の書評、というのはあまり見たことがない。いや、その筋の趣味人好事家道楽者の界隈には紹介言及ひけらかしな蘊蓄沙汰はそりゃ古来各種取り揃えてあるものの、それらは概ね書評というのでもなくお互い手のこんだマウンティング、こじれた相互認証の手…

谷川雁 「びろう樹の下の死時計」

はじめ私は道ばたの草むらにつないである牛の傍をすりぬけたとき、その牛がまじまじと私をみつめるのに閉口した。「内地」ならば、ふてくされて知らぬ顔の半兵衛をきめこむのを得意としているこの獣がゆっくりとみつめる大きな眼には、なにかお互いの寂寥感を…

 柳田國男 『青年と学問』 

そうして現在この我々の目前に、政治と名づけて若干の或る個人の考えが、国民全体の共同生活の方向をきめること、またはこれをきめうる地位に立つ者を指定する選挙という仕事、あるいは経済行為と名づけてなるべく簡単な方法をもって、楽に自分自分に都合よ…