歴史

源了圓『義理と人情』

新書も文庫も、単にその判型だけの意味にしかならなくなって、中身もまた以前とはまるで違う薄さになっちまった。薄いったって「束」のこっちゃない、中身内容もだ。「単行本」「単著」が新書と同義になってるところもあったりするから、もうこれは「本読む老害…

サトウハチロー『僕の東京地図』

● 古書の書評、というのはあまり見たことがない。いや、その筋の趣味人好事家道楽者の界隈には紹介言及ひけらかしな蘊蓄沙汰はそりゃ古来各種取り揃えてあるものの、それらは概ね書評というのでもなくお互い手のこんだマウンティング、こじれた相互認証の手…

 長谷川伸 『石瓦混淆』

いつかいつかと思いつつ、棚上げにしていた仕事がそこここに散らばったまんま、気がつけば歳を食っている。なんのことはない、もう半世紀も生きたことになっちまってる。馬齢を重ねて、というもの言いも少しは身にしみる季節。たとえば、長谷川伸がいかに民…

 稲垣恭子 『女学校と女学生』

私にとって、最も身近な「女学生」は母である。吉屋信子と夏目漱石を愛読し、手紙やスピーチに独特の感情表現を込め、ミッション・スクールと修道院に憧れ、女学校時代の友人とファーストネームで呼び合う「万年女学生」の母に対して、面白さと同時に身内な…

 平田 寛 『失われた動力文化』

ところがここに、労働と技術を尊重してそれを実践した集団がいた。それは、仕事で手をよごすことをけがらわしいとみなしていた貴族や知識人がつくった修道院である。そこは、禁欲を守り、清貧にあまんじ、熱烈な信仰に燃えた修道士たちの自給自足の場であっ…